二重敬語は、一つの語に同じ種類の敬語を重ねた形です。「ご覧になられる」は「ご覧になる」、「召し上がられる」は「召し上がる」とすれば、相手への敬意を表せます。一文に敬語が何個あるかではなく、どの動作に、どの形を重ねたかを確認しましょう。

二つの原稿を見比べ、ペンで言葉遣いを確認する人の線画
文を短くする前に、誰の動作を表しているかと、敬語の形を確認します。

二重敬語の見分け方:一つの動作に同じ敬語を重ねていないか

例えば「お読みになられる」は、「読む」を「お読みになる」という尊敬語にした後、さらに尊敬の「れる」を付けた形です。文化庁の説明では、このように一つの語へ同じ種類の敬語を二重に使うものを二重敬語とし、一般には適切でないとしています。

「お読みになります」の「ます」は丁寧語なので、この重なりとは別です。尊敬語と丁寧語を組み合わせることまで避ける必要はありません。まず、元の動詞と敬語の役割を分けて考えると、必要な丁寧さを残して直せます。基本の役割は尊敬語と謙譲語のページでも確認できます。

よくある二重敬語と、敬意を残す言い換え

下の例は、上司や取引先など、相手側の動作を尊敬語で述べる場面を想定しています。自分の動作にそのまま当てはめないでください。

尊敬の形が重なった表現の見直し
見直したい表現言い換えの例重なっている部分
ご覧になられますかご覧になりますか「ご覧になる」+尊敬の「れる」
何を召し上がられますか何を召し上がりますか「召し上がる」+尊敬の「られる」
おっしゃられましたおっしゃいました「おっしゃる」+尊敬の「れる」
お帰りになられますかお帰りになりますか/帰られますか「お帰りになる」+尊敬の「れる」
お立ちになられますお立ちになります/立たれます「お立ちになる」+尊敬の「れる」
ご希望になられますかご希望になりますか/希望されますか「ご希望になる」+尊敬の「れる」

言い換えが二つある行では、どちらかを選びます。例えば「お帰りになる」と「帰られる」を混ぜず、「何時にお帰りになりますか」と尋ねれば、帰る人への敬意と質問の内容を伝えられます。

「ご希望される」はどう言い換える?

「ご希望される」も、改まった案内やメールでは形を見直したい表現です。文化庁『敬語の指針』は、「ご説明される」「ご利用される」などの「ご……される」を、本来、適切な尊敬語の形ではないと説明しています。「ご希望される」もこの形に当たるため、質問や条件に合わせて、次のように言い換えられます。

希望を尋ねる・案内する場面の言い換え
見直したい文言い換えの例
郵送をご希望されますか郵送をご希望ですか/郵送を希望されますか
どちらをご希望されていますかどちらをご希望ですか/どちらを希望されていますか
個別相談をご希望される方は、お知らせください個別相談をご希望の方は、お知らせください
変更をご希望されましたら、ご連絡ください変更をご希望でしたら、ご連絡ください

「ご希望がございましたら、お知らせください」の「ご希望」は名詞で、「ございましたら」は丁寧な条件表現です。「ご」がある文を一律に二重敬語と判断したり、「ご……される」と同じ形だと考えたりする必要はありません。希望の有無を簡潔に尋ねるなら、「ご希望ですか」が使いやすい形です。

形の判断の参照:文化庁『敬語の指針』第2章「敬語の形」、印刷ページ25(PDFの28ページ)。「ご希望される」も「ご……される」の形に当たるため、「ご希望ですか」「希望されますか」などを選びます。

慣用表現として定着している二重敬語もある

二重敬語に当たっても、習慣として定着している表現があります。文化庁は、尊敬語では「お召し上がりになる」「お見えになる」、謙譲語Ⅰでは「お伺いする」「お伺いいたす」「お伺い申し上げる」を例に挙げています。

  • 相手が食べる場面:「こちらでお召し上がりになりますか」は、定着した表現として使われます。「召し上がりますか」という形も使えます。
  • 相手が来たことを伝える場面:「お客様がお見えになりました」は、来た人を立てる表現です。
  • 自分が相手先を訪ねる場面:「明日、御社へお伺いします」は、訪問先の相手を立てる表現です。「明日、御社へ伺います」としても伝えられます。

これらが定着しているからといって、どの敬語にも同じ形を重ねてよいわけではありません。「お見えになる」にさらに「れる」を付けるなど、例外から新しい形を作ることは避けましょう。

「お書きになっていらっしゃる」は敬語連結

「お書きになっていらっしゃる」は、二重敬語の例外ではなく、別々の語を敬語にしてつないだ「敬語連結」です。元の「書いている」のうち、「書く」を「お書きになる」、「いる」を「いらっしゃる」にしています。同じ一つの語へ尊敬語を重ねる「お書きになられる」とは、成り立ちが違います。

敬語が複数ある表現を分けて考える
表現分けて見る部分判断のポイント
お書きになられる書く、という一つの動作尊敬の形が二重。「お書きになる」へ。
お書きになっていらっしゃる書く+いる別々の語を「て」でつなぐ敬語連結。
ご説明申し上げます説明する、の謙譲語Ⅰ「ご……申し上げる」は謙譲語Ⅰの一般的な形。
お待ちいたしますお待ちする+いたす謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱを組み合わせた形。

敬語連結は、各部分の使い方が適切で、つないだ意味に無理がなければ、基本的に許容されます。ただし、「て」でつなげば何でもよいわけではありません。例えば、先生が自分の家へ来る場面で「先生が私の家に伺ってくださいました」と言うと、「伺う」が訪問先である自分を立ててしまいます。この場面では「先生が私の家に来てくださいました」「先生が私の家にお越しくださいました」などとします。

「ご説明申し上げます」も、「説明」と「言う」を別々に謙譲語にした二重敬語と考える必要はありません。説明を受ける相手を立てる謙譲語Ⅰの形として、『敬語の指針』に示されています。「お待ちいたします」は、待つ相手を立てる働きと、聞き手へ丁重に述べる働きを併せ持つ形です。敬語の数だけで、これらを削らないようにしましょう。

会話とメールでは、文の目的を残して直す

二重敬語を見つけたら、重なった部分を直し、相手に何を尋ねる・頼む文なのかを残します。質問なら確認したいこと、依頼なら相手にしてほしいことと期限が伝わるかを読み返しましょう。

資料を送った後の確認

見直し前:先ほどの資料をご覧になられましたか。

言い換え:先ほどの資料をご覧になりましたか。

「ご覧になる」で、資料を見た相手への敬意を表せます。返事を頼むなら、続けて「修正点がありましたら、10月8日までにお知らせください」など、必要な内容と実際の期限を明示します。

申込案内で、希望する人を示す

見直し前:資料の郵送をご希望される方は、宛先をお知らせください。

言い換え:資料の郵送をご希望の方は、宛先をお知らせください。

この文の目的は、郵送を希望する人に宛先の連絡を頼むことです。「ご希望の方」とすれば、対象が明確なまま、短く案内できます。

送る前の確認は、誰の動作・元の語・伝える内容の順に

  1. 誰の動作かを確認する。相手が見る・帰るなら尊敬語、自分が相手先を訪ねる・相手に説明するなら謙譲語が基本です。
  2. 元の語と敬語の形を分ける。「読む→お読みになる」に尊敬の「れる」を重ねていないか。「書く+いる」のような別々の語の連結か、定着した表現かも確認します。
  3. 質問・依頼の内容を読み返す。必要な敬語を残した上で、対象、回答してほしいこと、期限などが分かる文になっているかを確かめます。

「一文に敬語は一つまで」という数え方はしません。例えば、共に同じ先生を敬う人へ「先生がおっしゃった内容を、皆様にご説明します」と伝える場合は、先生の発言に尊敬語を、説明する自分の行為に謙譲語を使っています。それぞれの語の働きと相手との関係に合っていれば、一文の中に複数の敬語があっても二重敬語とは限りません。