この記事の内容
  1. 時候の挨拶を選ぶ3つの確認
  2. 1〜12月の語句・読み方・選ぶ条件
  3. 「の候」「の折」「のみぎり」の使い方
  4. 書き出しから結びまでの定型文
  5. 暦と気候が合わないとき・表現に迷うとき
  6. 手紙の組み立てと季節を確認する
窓辺の白い机に置かれた便箋、封筒と万年筆
便箋を書き始める前に、差し出す時期と相手に合う季節の言葉を選びます。

時候の挨拶は、手紙の初めに季節の様子を添える言葉です。「秋冷の候」のような漢語調と、「朝夕は涼しくなってきましたね」のような口語調があります。改まった手紙では、頭語の後に時候の挨拶、相手の安否を尋ねる言葉や繁栄を喜ぶ言葉を続けます。

時候の挨拶を選ぶ3つの確認

  1. 差し出す時期を確かめる。下書きした日から投函まで時間が空く場合は、投函する頃の季節に直します。月が合っていても、まだ咲いていない花や降っていない雪を、自分や相手の地域で見たようには書きません。
  2. 相手と用件に合う調子を選ぶ。改まった案内状や取引先宛てなら「○○の候」、親しい人への近況の手紙なら身近な季節の一文が使えます。仕事の手紙でも、関係に応じて自然な文章を選べます。
  3. 短い挨拶から用件へつなぐ。季節の一文に相手を気遣う言葉を添え、その後にお礼や依頼などの本題を書きます。結びも、書き出しと季節や調子が食い違わないようにします。

たとえば「拝啓 秋冷の候、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと存じます」の後に、本題を続けます。「拝啓」と結ぶ言葉の組み合わせは、頭語と結語で確認できます。

1〜12月の語句・読み方・選ぶ条件

月は語句を探す目安です。同じ月でも前半と後半、地域やその年の気候で選び方が変わります。漢語調では、季節の語句に「の候(こう)」を続けます。月から書き出し例を探す場合は、時候の挨拶 月別早見表へ。

1〜3月:新年から春の訪れまで

月語句と読み方意味・選ぶときの条件
1月新春(しんしゅん)
厳寒(げんかん)
新春は新年を迎えた頃。厳寒は寒さの厳しい頃。「新春」を春の暖かさという意味で使わない
2月立春(りっしゅん)
余寒(よかん)
立春は暦の節目。余寒は立春を過ぎても残る寒さ。立春の日はその年の暦で確認する
3月早春(そうしゅん)
春暖(しゅんだん)
早春は春の初め、春暖は春らしい暖かさ。まだ冷え込む土地へ暖かさを決めつけない

4〜6月:花・若葉・初夏

月語句と読み方意味・選ぶときの条件
4月陽春(ようしゅん)
桜花(おうか)
陽春は明るく暖かな春、桜花は桜の花。桜の開花時期は地域によって違う
5月新緑(しんりょく)
薫風(くんぷう)
新緑は若葉の緑、薫風は初夏の爽やかな風。身近な木々や風の様子に合う言葉を選ぶ
6月梅雨(ばいう・つゆ)
薄暑(はくしょ)
梅雨は雨の季節、薄暑は少し暑さを感じる頃。まだ梅雨入りしていない地域などには、雨が続くと決めつけない

7〜9月:夏の盛りから秋の気配まで

月語句と読み方意味・選ぶときの条件
7月盛夏(せいか)
大暑(たいしょ)
盛夏は夏の盛り、大暑は二十四節気の一つ。大暑という節目は、その年の暦で確認する
8月立秋(りっしゅう)
残暑(ざんしょ)
立秋は暦上の秋の始まり。残暑は立秋を過ぎても残る暑さ。8月に入っただけで残暑とはしない
9月秋涼(しゅうりょう)
秋分(しゅうぶん)
秋涼は秋の涼しさ、秋分は暦の節目。暑い日が続く場合は、涼しくなったと断定しない

10〜12月:深まる秋から年の暮れまで

月語句と読み方意味・選ぶときの条件
10月秋冷(しゅうれい)
紅葉(こうよう)
秋冷は秋の冷たい空気、紅葉は木の葉が色づく頃。紅葉の進み方は地域や標高で違う
11月晩秋(ばんしゅう)
向寒(こうかん)
晩秋は秋の終わり、向寒は寒さへ向かう頃。立冬後に暦の季節を表すなら「初冬」なども候補になる
12月師走(しわす)
歳末(さいまつ)
師走は12月、歳末は年の暮れ。月初から「年の瀬も押し迫り」と、暮れの切迫感を強く出さない

「の候」「の折」「のみぎり」の使い方

  • ○○の候:「新緑の候」「秋冷の候」のように、季節を短い漢語で表す改まった形です。「候」は「こう」と読みます。
  • ○○の折:「寒さ厳しき折」「暑さ厳しき折」のように、その時期の様子に続けられます。「折」は「おり」と読みます。
  • ○○のみぎり:「初春のみぎり」「向寒のみぎり」のような改まった言い回しです。時節を表す語に続けます。

「朝夕は涼しくなりましたの候」のように、普通の文章へ無理に「の候」を足す必要はありません。口語調なら「朝夕は涼しくなりましたが、いかがお過ごしでしょうか」と自然につなぎます。用件が簡潔な連絡では、季節の表現を何文も重ねず、本題を伝えます。

書き出しから結びまでの定型文

取引先へ、いただいた資料のお礼を伝える

拝啓 秋冷の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

先日は、製品の資料をお送りいただき、ありがとうございました。社内で拝見し、導入を検討する際の参考とさせていただいております。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
敬具

「秋冷」は秋の冷気に合う時期の言葉です。ほかの季節に送る場合は、冒頭をその時期の語に替えます。季節感のある結びをさらに重ねるより、お礼や今後のお願いを簡潔に結ぶこともできます。

親しい人へ、秋の便りと近況を送る

朝の散歩道では、木の葉が少しずつ色づいてきました。そちらはいかがですか。

先日教えてもらった本を、週末に読み終えました。特に旅先の風景の描写が印象に残っています。

また会える日を楽しみにしています。朝晩は冷えるようになりましたので、どうぞお元気でお過ごしください。

自分が見聞きした季節の変化を短く伝え、相手の地域については尋ねる形にすると、気候の違いがあっても書きやすくなります。実際に見ていない花や紅葉を体験したように書かず、自分の言葉へ直して送ります。

暦と気候が合わないとき・表現に迷うとき

「立春」「立秋」「立冬」は暦の節目で、その日から全国一斉に気温が変わる意味ではありません。国立天文台の2026年暦要項では、立春は2月4日、立秋は8月7日、立冬は11月7日です。年によって日付が変わるため、別の年はその年の暦を確認します。(確認:2026年10月25日)

たとえば立冬を過ぎても暖かい場合は、「暦の上では冬を迎えましたが、こちらでは穏やかな日が続いています。そちらはいかがでしょうか」と、暦と自分の周囲の様子を分けて伝えられます。雪や霜がまだ見られないときに、日付だけを根拠に初雪や初霜を描写しないようにします。

季節の語句を決めかねる改まった手紙では、「時下(じか)ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」という書き出しも使えます。「時下」は「この頃」という意味で、特定の気候を表しません。親しい相手なら「お変わりありませんか」と近況を尋ねる言葉から始めてもよいでしょう。

手紙の組み立てと季節を確認する